我ら、ぼにぴん人

石巻で新しいコトを始めたり、これから始めようとする人たちのスピリッツをご紹介。

vol.4

2016.05.01

「身軽になった港町」で貸し服屋を~佐々木麻衣さん(28歳)

震災で、たくさんの「モノ」を失った石巻。

大きな喪失感に襲われたけれど、その先では「モノ」への執着心がなくなり、

震災前よりも軽やかな生き方を手に入れた、という人が少なくない。
そんな石巻の駅近くにある古民家レストラン『日和キッチン』の2階に、

2016年4月にオープンしたばかりの貸し服屋『日和スタイル』。

なぜ今、貸し服屋なのか、その理由を尋ねた。

 

【故郷の石巻に戻って】

服飾専門学校を卒業後、東京や岡山でファッション関係の仕事をし、

震災後にふるさとの石巻へと戻ってきた佐々木麻衣さん。

石巻の北端に位置し、海が間近に迫る十三浜(じゅうさんはま)の出身。

被災後、親が改修した実家に戻り、

仙台に移った家族とは離れ、ひとり十三浜で暮らしている。

佐々木麻衣さん

『日和スタイル』プロジェクトリーダー兼店長の佐々木麻衣さん(28歳)

 

そんな彼女が街なかで始めたのは、

家の箪笥に眠っているであろう、人々の捨てられない服を集め、

「お裾分けしあいましょう」と呼びかける新しい発想の「貸し服屋」さん。

初めて訪れた人は「貸し服屋?」と不思議そうな顔つきになるが、

大正時代の建物をリノベーションした古い階段を上がると、

雰囲気たっぷりの空間に一気に心を奪われる。

築100年の古民家をリノベーションした建物。1階にはレストランと雑貨店、2階に貸し服屋がオープンした

被災した築100年の古民家を改修した建物。1階にはレストランと雑貨店、2階に貸し服屋をオープン。いずれも営業は土日のみ

築100年の古民家を改装したお貸し服屋『日和スタイル』。キャッチフレーズは「可愛い服には旅をさせよ」

『日和スタイル』のエントランス。「可愛い服には旅をさせよ」との看板が

 

築100年以上の古民家の2階を改修した雰囲気たっぷりのお貸し服屋『日和スタイル』

2階の『日和スタイル』。とたんに、その世界観に引き込まれる

 

 

【箪笥主の思いと共に届けたい】

見事な空間づくりもさることながら、

服を借りる予定もないのに、つい長居してしまうもうひとつの理由は、

そのユニークなシステムにある。

 

基本的には、預かった服を別の人に貸すという『日和スタイル』。

服を預ける人を『箪笥主(たんすぬし)』と呼び、

自身のプロフィールやその服への思い入れを書いてもらう。

借りる人はサイズやデザインといった以外にも、

その服のストーリーを知って、選ぶことができるという仕組みだ。

 

「一度海をまとって身軽になった港町・石巻からは

お裾分けで成り立つ貸衣をまとうスタイルが、

すんなり納まるのではないでしょうか」とは、

佐々木さんが書いた開店時のご挨拶文。

 

込められた思いと共に、ひとつひとつの服を丁寧に紹介していきたい。

自分は店長というより、街の人の箪笥を預かる「管理人」だと話す。

箪笥主のプロフィール。顔が見えるだけで、大切に借りて着る、という想いになるから不思議

階段を上ったところに貼りだされた箪笥主たちのプロフィール。顔が見えるだけで、大切に借りて着る、という気持ちになるから不思議

 

すべての服に添えられるプロフィール

すべての服にプロフィールが添えられて

 

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「憧れて購入したものの着る機会がなく、手放せないまま眠らせていた」と書かれたポンチョ

 

箪笥主さんが大切な友人の結婚式に着用したという黒のドレス

箪笥主さんが大切な友人の結婚式に着用したという黒のドレス

 

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「この服が陽の目を見る日を夢見て」と書かれたニットワンピース。箪笥主は一度も着ていないとか

 

個性的な服がたくさん。今はまだ少ないが、メンズも取り扱う

おしゃれな友人たちに声を掛け、集めた服もたくさんある。今はまだ少ないが、メンズも扱う

 

ウエディングドレスも揃う。写真は手作りのもの

ウエディングドレスもある。写真は、麻の二枚仕立てのウエディングドレス

 

「衣」を通して、

見知らぬ人の人生を垣間見るような不思議な気持ちになる『日和スタイル』。

そんな体験をして気づくのは「丁寧に大切に、慈しんで着る」ということの新しさ。

飽きては捨てる安易な消費を促すファストファッションなどとは、

真逆の「衣」のあり方だ。

今月のぼにぴん人

佐々木麻衣さん(28歳)

石巻の十三浜出身。高校卒業後は、東京の服飾専門学校に入学。卒業後、岡山に本社がある有名ファッションブランドに勤務し、ショップ店員だけでなく、縫製の技術も身に着ける。震災後、石巻の仲間たちの誘いもあり、帰郷。追分温泉などでのアルバイトを経て、『日和キッチン』のオーナーと出会い、「衣」に関するプロジェクトの立ち上げリーダーとして、2016年4月に貸し服屋『日和スタイル』を創業。『日和スタイル』石巻市立町2-7-26(日和キッチン2階) TEL:0225-98-5428 営業時間:土日のみ 9時~17時

我ら、ぼにぴん人